2026/09/26 解決事例
疎遠だった親族の相続――財産も借金も分からない状態から、遺産調査で相続の判断材料を揃えた事例
本事例では、当事務所が遺産調査を行い、相続するかどうかの判断材料をそろえた解決事例をご紹介します。
1ご相談の概要
ご依頼者様は、普段ほとんど交流のなかったご親族(以下「故人」)が亡くなり、相続人となった方です。故人は一人暮らしで、生前に民間の事業者(以下「受任事業者」)と「死後事務委任契約」を結んでいました。そのため、葬儀や一部の解約手続きはその事業者が行っていましたが、財産や負債の全体像を把握している人は誰もいない状態でした。
相続には、次の3つの選択肢があります。
相続放棄や限定承認をするには、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に家庭裁判所へ申述しなければなりません(熟慮期間)。限られた時間の中で正しく判断するため、ご依頼者様は当事務所に遺産調査をご依頼されました。
2調査① 相続人の確定
まず、故人の戸籍謄本等を収集し、「法定相続情報一覧図」を作成しました。これにより、法定相続人がご依頼者様お一人であることを確定させました。
法定相続情報一覧図は法務局で認証を受けられる書類で、その後の金融機関等での相続手続にも使えます。手続きのたびに戸籍の束を提出する手間を省けるため、相続先が多いケースでは特に役立ちます。
3調査② プラスの財産の調査
不動産
ご自宅の不動産登記簿を取得するとともに、市役所から「名寄帳」を取り寄せました。名寄帳は、市区町村内で故人が所有する不動産を一覧にしたものです。その結果、ご自宅の土地・建物に加え、私道(公衆用道路)の共有持分も有していることが判明しました。私道の持分は本人も意識していないことが多く、見落としやすい財産です。なお、いずれの不動産にも抵当権などの担保は設定されていませんでした。
預貯金・金融商品
手がかりをもとに、ゆうちょ銀行、地方銀行、信用金庫、ネット銀行など計7つの金融機関に残高を照会しました。
また、FX取引会社2社に口座の有無を確認したところ、1社に口座が残っていました。残高はゼロでしたが、相続後に解約手続きが必要です。もっとも、金融商品の取引口座には、プラスの財産だけでなく負債がある場合もありますが、後述の信用情報機関に登録されていないため、必ず残高照会を行う必要があります。
自動車
軽自動車検査協会に対して弁護士会照会を行うことにより、故人名義の軽自動車1台を確認しました。
デジタル遺産
預金口座の入金履歴から、故人が動画投稿サービスで月1万円に満たない程度の収益を得ていたことが分かりました。ただし、アカウントの引き継ぎには故人が登録していたメールアドレス等が必要で、これを特定するのは容易ではありません。インターネット上の資産は、近年見落とされやすい財産の代表例です。
4調査③ 負債の調査
相続するかどうかを判断するうえで最も重要なのが、借金などの負債の調査です。本件では、次のように多角的な調査を行いました。
信用情報機関への照会
信用情報機関3社(全国銀行個人信用情報センター、CIC、JICC)に、故人の借入れやクレジットの情報を照会しました。このうちCICは、氏名や生年月日だけでなく、電話番号または運転免許証番号をもとに照会する仕組みです。そこで、他の信用情報機関や金融機関、受任事業者に登録されていた情報から故人が使っていた電話番号を3回線突き止め、運転免許証番号とあわせてすべてで照会しました。
契約先・支払先への照会
携帯電話会社、インターネットプロバイダ、インフラ機関に契約状況と未払金を照会しました。また、生前に交通事故の記録があったため保険会社に確認し、示談で解決済みであることも確認しました。
取引履歴・郵便物のチェック
預金口座の取引履歴を1年分さかのぼり、定期的な返済がないかを確認しました。信用情報機関に登録されない借金の手がかりになるためです。結果は、税金や公共料金などの支払いのみでした。あわせて、受任事業者に転送されていた郵便物から、未払いの請求書も洗い出しました。
判明した負債
調査の結果、カードの未払金、インターネット利用料、光熱費、税金の未払分、死後事務の立替費用などが判明しました。見落としがちなのが年金の過払い分です。亡くなった後も年金の支給が続き、本来受け取れない分が振り込まれていた場合は返還が必要で、本件でも負債の大きな割合を占めていました。
5調査結果と解決
調査の結果、負債より多くのプラスの資産が確認されたため、相続をしたとしても損をしないことが明らかになりました。
このような調査により、ご依頼者様は「相続したら思わぬ借金を背負うのではないか」という不安から解放され、十分な情報に基づいて相続するかどうかを判断できるようになりました。
あわせて当事務所では、各金融機関での預金の相続手続き、FX口座やインフラ契約の解約、受任事業者からの保管金の受け取りなど、今後必要となる手続きをまとめてご案内しました。
当事務所の遺産調査・相続人調査の内容や進め方は、遺産調査・相続人調査のページでもご紹介しています。
6弁護士からのポイント
調査が終わるまで遺産に手を付けない
故人の預金を引き出して使ったり、財産を処分したりすると、相続を承認したとみなされ(民法921条)、後から相続放棄ができなくなるおそれがあります。判断がつくまでは、遺産に手を付けないことが大切です。
熟慮期間は延長できる
3か月以内に調査が終わらない場合は、家庭裁判所に熟慮期間の延長(伸長)を申し立てることができます。期限が迫っていても、あきらめずにご相談ください。
負債調査は「多角的に」
信用情報機関への照会だけでは、個人からの借金や公共料金の滞納、年金の過払いなどは分かりません。取引履歴や郵便物など、複数の手がかりを組み合わせることが重要です。
7まとめ
疎遠だったご親族の相続では、手がかりが少ないうえ、期限も限られています。ご自身で一から調べるのは大きな負担です。当事務所では、相続人の確定から財産・負債の調査、その後の手続きのご案内まで一貫してサポートしています。突然の相続でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
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参考リンク(公的機関・一次情報)
※守秘義務のため、事案の一部を変更しています。

