解決事例

2026/07/23 解決事例

公正証書遺言で「全財産を兄に」——遺留分侵害額請求で当初提示の約10倍・約2,000万円を取り戻した解決事例

いつも当事務所のホームページをご覧いただき誠にありがとうございます。
弁護士の瀬野 陽仁です。
本日は、公正証書遺言で「全財産を兄に」と遺されたご相談者が、遺留分侵害額請求によって当初提示の約10倍を取り戻した解決事例をご紹介します。
■事例の概要
相談の種類 遺留分(遺留分侵害額請求)
ご相談者 60代・女性・会社員(被相続人の二女)/県内在住
相手方 ご相談者の兄(被相続人の長男)
主な争点 ①不動産の評価額 ②兄への生前贈与(特別受益)の算入 ③預貯金の使途
解決方法 交渉 → 決裂後に地方裁判所へ提訴 → 訴訟上の和解
解決までの期間 受任から約1年6か月
結果 相手方の当初提示 約200万円 → 和解による解決額 約2,000万円(約10倍)

ご相談の背景・経緯

ご相談者のAさんは、お父様を亡くされた後、兄から一通の手紙を受け取りました。そこには「父は公正証書遺言で全財産を自分(長男)に相続させると遺していた」と書かれていたそうです。

Aさんとお兄様は兄と妹の二人きりで、本来であれば遺産を半分ずつ受け継ぐ立場です。ところが遺言では、ご自宅の土地建物も預貯金も、すべてお兄様が取得する内容になっていました。Aさんは「父が元気なうちから兄が世話をしていたので、多少の差は仕方ないとも思う。ただ、自分の取り分がまったくのゼロというのは納得できない」との思いを抱えて、当事務所の無料相談にお越しになりました。

ご相談時のお悩み・ご不安

  • 公正証書遺言がある以上、もう自分は一円ももらえないのではないか。
  • 「遺留分」という言葉は聞いたことがあるが、自分に何がどれだけ認められるのか分からない。
  • 兄からは「めぼしい財産はない」「家も古くて価値はない」と言われており、確かめようがない。
  • 兄は昔、父から住宅資金や事業資金の援助を受けていたはず。それは考慮されないのか。
  • 兄弟げんかのようにはしたくない。穏便に、しかし正当な取り分は確保したい。
  • 請求には期限があると聞き、急いだほうがよいのか焦っている。

当事務所のサポート内容(解決までの流れ)

(1)まず「期限」を止めました

遺留分侵害額の請求権には期間制限があり、相続の開始と遺留分を侵害する遺贈があったことを知った時から1年で時効消滅してしまいます(民法第1048条)。当事務所は受任後ただちに、お兄様に対し遺留分侵害額を請求する旨の内容証明郵便を送り、権利行使の意思表示を確定させました。この一手で、以後の交渉を落ち着いて進める土台を確保しました。

ポイント

遺留分侵害額請求は「知った時から1年」で時効消滅します。まずは請求の意思表示を証拠に残すことが、その後の交渉を有利に進める第一歩です。

(2)「本当の遺産の姿」を明らかにしました

お兄様側は当初、不動産を低い評価額で見積もり、「遺留分といってもせいぜい200万円ほど」と主張してきました。当事務所は次の作業を行いました。

  • 自宅不動産について複数の不動産会社の査定を取得し、必要に応じて不動産鑑定士の評価も準備。
  • 預貯金の取引履歴を精査し、生前の資金の動きを確認。
  • お兄様が生前にお父様から受けていた住宅資金・事業資金の援助を洗い出し、これが「生計の資本としての贈与(特別受益)」に当たり、かつ相続開始前10年以内のものとして、遺留分を算定するための基礎財産に加わることを主張(民法第1043条、第1044条第3項)。

(3)交渉から訴訟へ、そして和解へ

交渉では、お兄様側が不動産評価と生前贈与の点で歩み寄らなかったため、当事務所は地方裁判所に遺留分侵害額請求訴訟を提起しました。訴訟の中で不動産評価と特別受益の資料を丁寧に主張・立証した結果、裁判所の関与のもとで、お兄様が相当額の金銭を支払う内容の和解が成立しました。

解決の結果

相手方の当初提示 → 和解による解決額
当初提示
約200万円
和解による解決額
約2,000万円
当初提示の約10倍で解決

Aさんは「ゼロだと思っていたところから、まさかここまで取り戻せるとは思わなかった。何より、感情的にならずに筋を通して解決できたことがありがたい」とおっしゃっていました。

※金額は守秘義務に配慮して概数に丸めています。

担当弁護士からのコメント

「公正証書遺言があるから諦めるしかない」と思い込んでおられる方は少なくありません。しかし、兄弟姉妹以外の相続人には遺留分(原則として法定相続分の2分の1)が民法上保障されており(民法第1042条)、遺言で取り分がゼロとされていても、侵害された分は金銭で請求できます(民法第1046条)。

本事例で結果が大きく変わった鍵は、(1)期限内にきちんと請求の意思表示をしたこと、(2)不動産の評価と生前贈与(特別受益)を証拠に基づいて争ったことの二点です。

生前贈与の落とし穴

相続人が受けた生前贈与のうち遺留分の計算に取り込めるのは、原則として「生計の資本など特別受益に当たる贈与」で、かつ「相続開始前10年以内」のものに限られます(民法第1044条第3項)。より古い贈与は原則として計算から外れますが、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知って行った贈与は、それより前のものでも取り込める場合があります。どの贈与を、いくらで、どこまで拾えるかで結論が大きく動くため、資料に基づく丁寧な検討が欠かせません。

遺留分侵害額請求には1年の期間制限があります。「遺言で自分の取り分がない」と感じたら、できるだけ早い段階でご相談ください。

(担当:弁護士 瀬野 陽仁)

遺言で自分の取り分がない、遺産に不動産がある、きょうだいだけが生前に多額の援助を受けていた——そのような場合でも、取り戻せる可能性があります。相続・遺留分に注力する当事務所が、初回のご相談で解決の見通しをお伝えします。

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